上気道炎
鼻から喉にかけての咽喉に起こる急性の炎症です。咽頭粘膜やリンパ組織の急性咽頭炎、喉頭粘膜の急性喉頭炎など患部の場所によって名称が異なり、それぞれ治療法や治るまでの期間に若干の違いがあります。主な原因はかぜのウイルスですが、進行して細菌感染を合併することもよくあります。はじめから細菌感染によって発症することもあります。それぞれ治療法が少しずつ異なります。
急性咽頭炎で細菌感染が疑われる場合は抗生剤、ウイルス感染のみと考えられる場合は喉の炎症を抑える薬を処方し、ネブライザー治療も有効です。適切な治療を受けて安静を保つことでほとんどの場合、2週間以内に治ります。
急性喉頭炎も急性咽頭炎と同じ治療を行います。ただし、治るまで比較的長い期間が必要になります。ほとんどは1~3週間かかり、1ヶ月以上を要するケースもあります。
扁桃炎
口の中の一番奥、口蓋垂(のどちんこ)の左右に1つずつあるのが口蓋扁桃です。扁桃炎は、口蓋扁桃に細菌やウイルスが感染して急性の炎症が起こっている状態です。高熱と強い喉の痛みが現れます。1年に複数回の扁桃炎を繰り返す場合は、慢性扁桃炎と呼ばれます。
扁桃炎の症状は、高熱、寒気、頭痛、関節痛、全身の倦怠感があり、喉の痛みが強いのが特徴です。喉を観察すると、奥の左右が赤く腫れているのがわかります。
診察では症状をうかがった上で口を開けてもらって喉を観察します。血液検査で白血球の数や炎症の程度を調べ、尿検査で脱水などが起きていないかを確認します。必要があれば細菌培養検査を行って適切な抗生剤を選びます。
ウイルスが原因で起きている場合、高熱であれば解熱剤を用い、安静を保つことで回復を待ちます。ほとんどの場合、1週間程度で治ります。うがいをこまめに行うことも重要です。細菌が原因の場合には抗生剤を用います。その上で症状に合わせて解熱剤、消炎鎮痛剤などを処方します。
慢性扁桃炎の場合、保存的な治療で十分な効果を得られない場合や、頻繁に炎症を繰り返す場合には扁桃切除の手術も検討します。
扁桃周囲膿瘍
口蓋扁桃に起こった急性扁桃炎の炎症が周囲に広がり、進行して膿のかたまりができている状態です。若い男性の発症が多い傾向があります。
喉の腫れや痛み、発熱に続いて、顎を開けにくい、話しにくい、飲み込みにくい、喉の片側が激しく痛む、口臭などの症状が現れます。問診と観察、そして血液検査で白血球の数や炎症の程度を確認します。治療では抗菌剤を用います。抗菌剤の効果が現れにくい場合には、膿瘍という膿のかたまりの部分に穿刺や切開を行って排膿する処置を行うこともあります。排膿させると痛みは治まります。
咽頭炎
咽頭は鼻腔や口腔の奥にあって喉頭や食道につながる部分で、そこに炎症を起こした状態が咽頭炎です。咽頭の炎症は細菌やウイルスの感染だけでなく、刺激性ガスや粉塵の吸入、喫煙、大声を出し続けるなどによって起こることもあります。
喉の症状が多いことが特徴で、喉の痛み、むずがゆさ、声枯れ、咳、痰などを起こします。重症化すると呼吸困難を起こす可能性があり、注意が必要な病気です。急性喉頭蓋炎などを合併させないよう、呼吸しにくさを感じたらすぐに受診してください。
診療では問診や喉の観察を行い、喉頭鏡で咽喉頭を調べて炎症部位や程度、気道狭窄の有無を確認します。症状に合わせて治療を行いますが、喉の症状を抑えるための吸入治療も有効です。気道狭窄が起こっている場合には、抗生剤の点滴投与や気管切開などの外科的処置が必要になることもあります。
耳下腺炎・顎下腺炎
耳の前から下にかけての耳下腺、耳の下にある顎のさらに下の顎下腺の炎症です。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などウイルスや細菌の感染が主な原因ですが、それ以外の原因で起こることも珍しくありません。唾液腺炎を合併すると唾液の機能低下が起こります。唾液は、抗菌、粘膜保護、消化など多くの作用を持っているため、唾液の機能低下によって口内の状態が一気に悪化する可能性があります。
耳の前から顎下の部分にかけて、炎症が起こっている場所の痛みが起こり、唾液が減るため口内が乾燥しやすくなって飲み込みにくさにつながります。また、発熱や寒気も生じます。問診と患部の観察、血液検査や超音波検査などを行って診断します。ウイルスが原因の場合には安静を保ち、症状に合わせて解熱剤などを処方します。患部を冷やす、こまめにうがいをするのも重要です。細菌性の場合には抗生剤も用います。
口内炎
口内やその周辺の粘膜に起こる炎症で、ビタミンの不足、疲労、ストレス、誤って噛んでしまうなどの外傷、全身疾患など、口内炎ができる原因はさまざまです。炎症部分に熱いものや冷たいものがしみる、食べ物が触れると強く痛むといった症状があり、悪化すると食事できなくなることもあります。診断では問診と炎症の観察を行います。頬や唇の内側、歯ぐき、舌など口内炎ができた場所、多発や繰り返しできていないか、治りにくさなども診断には不可欠な要素です。全身性の疾患が疑われる場合には血液検査などを行います。診断をもとにステロイド薬や抗菌薬、ビタミン剤の投与など原因や状態に合わせた治療を行っていきます。原因疾患が見つかった場合には、その治療も行います。